走り続けた16年(34)

苦闘する庁舎問題⑤

平成3年12月、市は土地開発公社を通じて120億円の蛇の目工場跡地を取得しました。その頭金として庁舎建設等の基金を使い果たし、用地は確保したが庁舎建設の着手には至りませんでした。

そのため、緊急避難として大久保慎七市長は、議会の同意を得て市役所第二庁舎を建設してもらい10年の契約で貸借しました。しかし、バブル経済の崩壊は、庁舎建設基金の積み立てどころか用地取得の借入金の返済も滞る状況に陥りました。

そのため平成11年市長に就いた私は、平成12年3月の議会に、武蔵小金井駅南口再開発事業に伴って第二地区内に都市基盤整備公団の保留床に建設される庁舎を、市有財産の運用と公団の割賦償還制度を使い92億円で取得する計画を提案しました。

これにより、再開発事業が円滑に進み庁舎問題も解決できることで、市議会3分の2強の議員の同意を得てのスタートでした。

しかし、再開発第一地区の事業の遅れや、選挙による議会構成の変化、議員の考え方が変わるなどもあり、第二地区への庁舎建設は思い通りには進みませんでした。120億円の用地費を加算せず蛇の目に建てれば40〜50億円で済むとし、用地費を含む駅前庁舎92億円の無駄遣いとの喧伝もありました。

リース庁舎は解決すべきとの主張はあるものの実現可能な対案を示すことができず、第二庁舎の賃貸契約が平成15年で満期になっても、さらに5年間継続をしなければなりませんでした。

さらに、平成16年第1回(3月)定例会で平成16年度一般会計予算が本会議の採決で可否同数になり、議長裁決により否決されました。否決の原因は、再開発と東小金井北口土地区画整理事業の予算が組み込まれていることへの反発でした。

そのため、国や都、都市公団も再開発を諦め、小金井市から撤退することを考え、市に対して、損害賠償請求の準備に入ったといわれました。そのため、私は臨時に市議会を開いて予算を通すことの強い決意を伝え、国や都、関係団体に協力を依頼しました。

あらゆる手を尽くして開いた5月24日の臨時市議会。改めて3月と同様の予算を提案しましたが、議会の理解が得られず否決され、再度の暫定予算になりました。

何度も挫折した小金井市の街づくりのラストチャンスです、JR中央線の高架化にも影響を与える再開発や区画整理等、諦めるわけにはいきません。小金井100年の街づくりは何としても果たさなければなりません。

市民は、この街づくりに期待しており、議会の対応とは乖離(かいり)があるというのが私の思いでした。

6月4日、任期を3年残して市長を辞職し、再選挙により市民の考え方をお聞きすることにしました。

選挙の結果は、街づくりを進めるべき、という民意がはっきり示されました。その結果、武蔵小金井駅南口第一地区の再開発が平成23年度末に完成し、東小金井駅北口の区画整理も大きく前進することになりました。

(つづく)

走り続けた16年(33)

苦闘する庁舎問題④

平成6年2月、10年の契約で業務を開始した市役所第二庁舎の賃貸借契約は平成15年末をもって契約期間が満了することから、市は三菱信託銀行と更新に向けての協議を8月から行ってきました。

バブル経済の崩壊により価格の下落が進んでいたこともあり、急ぐことはなく期限の4か月前から交渉を本格化させました。

契約更新の内容は賃料と契約期間に絞っての交渉になりました。

賃料については不動産鑑定の結果を踏まえ、市の不動産価格審査会を経て12%強の減額となりました。また、駐車場や共益費(施設警備、清掃業務等)も減額での合意となりました。

難航したのは更新期間でした。

相手方の信託銀行は10年を主張し、市は、平成16年1月1日から20年末までの5年間とすることに固執しました。厳しい交渉の結果、私たちの主張が貫ぬかれました。

それは、武蔵小金井駅南口再開発の第2地区に庁舎を建設する計画があったからです。

平成11年4月の市長選挙で当選した私の選挙公約のひとつが「JR中央線の高架化と駅周辺の整備」でした。

新宿から八王子の間で最も駅周辺の整備が遅れているのが武蔵小金井と東小金井の両駅であり、市民生活に大きな支障があることや市外から知人が来た時に待ち合わせの場所も駅前広場もなく、恥ずかしいとの声を耳にする度、議員の時から肩身の狭い思いでした。何としても整備を果たしたいとの考えが選挙公約になりました。

しかし、再開発は従前からの計画での実施は不可能でした。

市議会特別委員会からは、実現可能な計画を早急に立てるようにとの議員の強い要望を受け、私は翌、平成12年3月議会に「武蔵小金井駅南地区市街地再開発事業に係る市の方針(案)」として、新たな再開発計画を議会に示しました。

その特徴は、再開発も新庁舎建設も単独での事業の実現が無理なことから、再開発区域に庁舎を含めて事業を推進し、再開発第2地区に完成した市庁舎を、都市基盤整備公団の割賦償還制度を活用して平成20年度に取得し、リース庁舎を解消するというものでした。厳しい議論が連日のように続きました。

市役所の位置の変更には、市議会議員の特別多数(3分の2以上)の同意が必要です。

平成12年6月市議会に市民から、再開発に合わせて市庁舎を建設する陳情と、あくまで蛇の目工場跡地への市庁舎の建設を求める陳情が提出されました。

議会の採決では、23人の議員の内16人(3分の2強)の議員が再開発区域への市庁舎建設に賛成し、反対は7名でした。蛇の目跡地に関してはこの真逆の採決結果でした。

これを受け委員長から「各委員の意見を踏まえ、市長の判断で対応していただきたい」の言質をいただき、私は直ちにこの計画から「案」を取って「市の方針」とし、都市基盤整備公団に再開発の施行依頼をしました。

そのため、リース庁舎の契約更新期間を平成20年までの5年間にこだわったのです。

(つづく)

走り続けた16年(32)

苦闘する庁舎問題③

現在、小金井市役所第二庁舎として賃貸している前原3丁目の土地と建物が昨年の10月末、民間不動産業者に売却され、所有者・賃貸人が変わることになりました。

所有者・賃貸人は変わりましたが前所有者と三菱東京UFJ信託銀行そして、本市と交わしている賃貸契約の内容はそのまま継承されることになります。

2年半前の平成26年第3回(9月)定例会に、その第二庁舎を取得するための一般会計補正予算を市議会に提案しましたが議員多数の反対で取得に至らず、その結果として、リース庁舎の解消を果たすことができずリース庁舎継続になってしまいました。

そしてその後、民間不動産業者の手に渡ってしまったのです。

業界の話としては、売買価格は平成26年に小金井市と合意していた金額18億6千594万円を大きく上回る金額で取り引きされたと伝わっています。

私は、旧所有者と小金井市とで合意していた金額が公になっていただけに、売却に際して買い叩かれる原因を作ってしまったのではないかと危惧していましたが、杞憂(きゆう)に過ぎませんでした。

この賃借している第二庁舎の賃借期限は1年半後の平成30年8月までとなっており、この2月に、それ以降の第二庁舎のリース料と賃借期間について、市は、新所有者である不動産業者に示し、交渉に入ることになりますが厳しい交渉になることが想定されます。

さて、平成21年9月の庁舎建設等調査特別委員会で当時の民主党市議会議員村山秀貴さんから「市役所第二庁舎は買い取るべきではないか」との発言がありました。

私は、この様な発言をすると事前に聞いたので、それには「市議会の民主党会派や民主党支部に予め伝えることが必要ですよ。支部長の西岡真一郎都議(現市長)は買うべきだと言うと思うけど」と、意向を確認してから発言するよう進言しました。

この村山議員の発言はかなりのインパクトがあり、当時を知る議員の多くはその時の発言を良く覚えており、その後、村山氏不在の平成26年第3回定例会に第二庁舎取得の補正予算を提案した際にはこの発言は大変話題にもなりました。

この様に取得すべきとの考えは一議員に限らず市政を経営的視点から考える多くの議員は同様の考えを持っていました。

この特別委員会でも村山議員以外からも所有者の意向を探るべきとの発言もありました。しかし、その時点では所有者と三菱東京UFJ信託銀行の間で交わされた30年間の土地信託契約が継続中であり、所有者が一方的に契約を解除すれば違約金が発生するなど、市が第三者の立場で交渉に立ち入る余地はありませんでした。

しかし、私たちはその推移を非常に強い関心を持って見ていました。

(つづく)