走り続けた16年(81)

置き去られた乳児④

赤ちゃんの誕生は多くの人々に望まれ祝福の中で生まれてくるものです。しかし、Aちゃんの場合はそうはなりませんでした。人に知られず母親は悩み苦しみの中、誰にも付き添われることなく一人で出産しました。出産後はさらに悩み苦しんだ末、遺棄することになってしまいました。

母親の残したA4のレポート用紙に書かれた手紙は、「私には他に頼れる人がいません。あなた様の手で、この子を育ててくださる方を探してもらえないでしょうか。この子は、私といては幸せにはなれません。どうか救ってやってください。私のしていることは間違っていることだと分かっています。母親である私の手もとからこの子を手放したことを、この罪を一生をもって償いたいと思います。どうかお許しください」とあります。

一人で悩まず妊娠したことを親に話せば、親からは激しく怒られるでしょうが、それは、一時の問題で一生をもって償うことにはならず、出産に当たっては親をはじめ大勢の人々が喜んでくれただろうと思うと非常に複雑な気持になります。

赤ちゃんは生まれて7日後の平成16年3月19日夜、本町5丁目の教会の玄関前に遺棄されました。すぐに救急車で病院に運ばれました。母親はパトカーや救急車のサイレンの音をどんな気持ちで聞いていたのでしょうか。

赤ちゃんには病院で数回面会しました。とても可愛く健康で、何の問題もなく元気で1週間で退院し、乳児院に移りました。

その乳児院は児童養護施設と併設されており、保護者の種々の事情により養育することが困難な子どもたちを、養護・養育し、その発達や自立を支援することを目的に設置されています。概ね、0歳から18歳までの子どもをお預かりしており、定数いっぱいの40数名の子どもたちがいました。しかし、親や家族が確認できず、面会人のないのはAちゃんだけでした。そのため、私はできるだけAちゃんに面会するようにしました。施設近くでの仕事帰りや、時間が空けば妻と電車で行くこともありました。また、福祉推進課の坂田米子課長(後に小金井市初の女性部長)にはAちゃんを大変可愛がってもらいました。

坂田課長と一緒に面会に行くと施設の職員は「Aちゃんおじいちゃんとおばあちゃんですよ」と言いながらプレイルームに抱かれて入ってくるのです。

月1回ぐらいの面会でしたがその成長は私たちにとっても大きな楽しみでした。

その当時、市政は一般会計予算が3月26日市議会で否決され、国や都は小金井の街づくりを見限り、都市再生機構は撤退を決め、小金井市への損害賠償の算定に入ったと伝わってきました。

私は、4月に入り国交省に行き、5月24日に招集する臨時市議会で予算を可決させるので、再開発断念を待つように申し入れました。国交省の審議官等の幹部から、可決できない場合はどうするか、と問われたので、「市長を辞職して市民に信を問う」と答えると、その場の雰囲気が一変しました。

(つづく)

走り続けた16年(73)

西岡市政、折り返し点を経て④

西岡真一郎氏市長が市長に就任し、僅か1週間で10%の職員の地域手当を3年で15%にアップすることを職員組合と合意しました。人事院の勧告は2年で完成させるというものでしたが、組合との合意内容は平成27年度は12%への引上げで6千100万円、28年度は14%で1億2千800万円、3度目の29年度は15%で1億6千100万円の給与の引上げとなるもので3年での完成です。

このための原資は勿論市民の血税です。急を要する支出であっても、市民サービスへの財政支出なら理解もできるのですが、選挙を終えて市長に就任し、予算編成等超多忙な1週間での職員給与の大幅な引上げの決定は理解に苦しみます。市民との対話を重視するという西岡市長、その市民や議員が気付く前に、労使で合意し調印しました。市長にはその権限が与えられていますが、これが西岡市政の「真の行政改革」なのでしょうか。

平成30年第一回定例会が平成30年2月21日に開会されました。この定例会は西岡真一郎市長の施政方針が示されるとともに、平成30年度の一般会計予算や特別会計予算が審議される、1年で最も重要な議会になります。

西岡市長は、任期の折り返し点を過ぎた本定例会の施政方針で、市庁舎や福祉会館、そして図書館等6施設複合化の選挙公約を4施設に、そして、ゼロベースで見直す、と変えたことについて、市民への丁寧な説明が期待されましたが果たされませんでした。

昨年9月の第三回定例会での決算特別委員会では、多くの議員が選挙公約の変遷について質しました。しかし、答弁の言葉はきれいで力強いのですが、質問にまともに答えることなく、議員も市民も納得できる内容にはなりませんでした。

選挙で市民に約束した6施設複合化のプランすら示さず、公約の変遷を市民に説明することも避けるなら、選挙で市民は何を基準に投票したのかです。

平成23年4月の市長選挙で私は落選しました。当選した佐藤和雄市長は、ごみ問題に関する選挙公約での市政混乱の責任をとって、約半年で辞職し再度の選挙になりました。

12月の市長選挙に立候補を決意した私に、民主党小金井支部は「ごみ問題解決のため苦渋の決断」として支援を機関決定しました。自民党、公明党推薦の私への支援は、重く厳しい決断ですが、ごみ問題を解決し、市民生活を守るためには止むを得ないと判断したものでした。そこで民主党小金井支部長の西岡氏(現市長)から署名を求められた文書は「小金井市長選挙に関する合意事項」として、①、政策合意に関しては、今般の選挙戦の最大の争点であるゴミ問題への取り組みに絞ることとし、他の政策課題等については是々非々で臨む。②、ゴミ処理問題への取り組みについては、平成25年3月までに実現可能なゴミ処理に向けての一定の方針を市民に示し、平成25年内の早い時期に最終的な処理方法を確立する。この取り組みに関し、職を賭して取り組むことを公約として明言する、という内容です。この合意内容は民主党のビラになり市内全域に配布されました。

社民党小金井支部とも同様の内容で合意しての支援でしたが「職を賭して」の文言はありませんでした。

市長選挙に当選し、職を賭してのごみ問題解決への取り組みは、平成24年4月、日野市長へ、日野市クリーンセンターの建て替えに当たって、小金井市との可燃ごみの共同処理することを申し入れました。平成24年11月30日、日野市長が可燃ごみ処理施設の建て替えについて国分寺市、小金井市と共同化することを決定し、日野市議会へ報告しました。平成25年3月13日、3市で可燃ごみの広域化を進める、とした覚書を3市長で締結。6月8・9日、3市長が出席し、クリーンセンターごみ処理施設の建て替えと広域化について地元で説明会を開催し、一定のご理解をいただきました。これで、民主党小金井支部との合意事項、さらに、選挙公約を果たすことができました。これは、様々な場面で、職員の並々ならぬ努力と、議員の協力のお陰でした。そして、平成27年12月17日、ごみ問題等を解決し、私の市長としての任期は終わました。

(つづく)

走り続けた16年(55)

苦闘する庁舎問題㉑

一昨年12月の市長選挙で当選した西岡真一郎市長は新庁舎等の建設問題について、選挙公報で「蛇の目跡地に6施設を集約して改修費&維持管理費を削減し、新たな市民サービスの財源にします。」と公約しています。

「6施設とは本庁舎、第二庁舎、本町暫定庁舎、福祉会館、前原暫定集会施設、そして図書館の6施設を集約して建設する」というもので、建設は、67億円で完成でき、新たな市民負担はなく、財政問題と切り離してできるというものでした。6施設といっても実質は、庁舎、福祉会館そして、図書館ということになります。

就任した西岡市長は1月の初議会で「6施設複合化は直近の民意であり、市長選挙に掲げた政策をご信任いただいた以上、それを果たすことが何より重要なことで、私に与えられた使命であり、何としても果たしたい。」と公約の実現を力強く宣言しました。

しかし、5月にはその公約や発言を撤回し、図書館等を除いた「4施設の早期実現を優先することを、私の揺るぎない方針とする。」と議会で明言しました。さらに、その4か月後の10月には「ゼロベースで見直すことを決断し、今後、市民、議会、行政が一体となって、進む方向を定めます。」に変わりました。

その都度、発言の「言葉」は美しく力強いのですが、度重なる変更に、これが責任ある、誇りの持てる市政といえるのか疑問を持たざるを得ません。

公約の変遷について、市民に丁寧に説明する必要があるのではないでしょうか。

子どもたちが「選挙と政治」について学ぶ時、この様な選挙公約の変遷は教育上どのように教えられるのかも気になるところです。

現在、新庁舎と新福祉会館についての議論は進んでいるようですが、選挙公約の大きな目玉であった図書館の建設のスケジュール等、計画の具体化が全く見えません。期待の大きさから、これも早急に示す必要があるのではないでしょうか。

平成23年4月、佐藤和雄市長が市長に就任し、最初の定例会で選挙公約にある、「ごみ処理4年間で20億円のムダ使い」と主張した件や市民交流センターの取得について質疑が集中し、佐藤市長は公約の変更をしました。

定例会後、「民主党・社民クラブNEWS」が「平成23年第2回定例会(6月議会)報告号」として発行されました。その報告号では、「民主党・社民クラブは、佐藤市政の提唱する子育タウン・環境先進自治体(エコタウン)を目指す方向性は支持できますし、いたずらに市長と対立し、市民不在の不毛な争いを続け、市政を混乱させるつもりはありません。しかし、選挙公約は重要であり、就任して間もないにもかかわらず安易に変更するのは、市民有権者を愚弄した行為であると主張します。」と佐藤市長を厳しく批判しています。

私は、佐藤市長のムダ使いの選挙公約変更に対する、民主党・社民クラブの議員の主張は一定の見識であると思います。ただ、それは、誰が市長であっても同じことが言えるかが問われることになります。

(つづく)

走り続けた16年(54)

苦闘する庁舎問題⑳

2年前の市長選挙の争点はやはり庁舎問題でした。

西岡真一郎市長の市長選挙における法定ビラ2号には、「平成4年に蛇の目ミシン跡地を約120億円で購入したのに新庁舎を建設せずに家賃がかかるリース庁舎(第二庁舎)を使い続け、突如としてリース庁舎を購入する案を示し、すぐさま撤回するなど迷走が今も続いています。」とあります。この文言を信じて選挙した有権者もいたことでしょう。

しかし、これは当時の状況を的確に把握して判断した、責任あるものとは思えません。

庁舎建設予定地として蛇の目工場跡地の取得には、なけなしの40億円の基金(貯金)をはたいて頭金にし、残り80億円は市に代わって小金井市土地開発公社の借金により取得したものです。

その後、バブル経済が崩壊、市税収入が激減する中で、社会保障費は増加の一途となり、庁舎用地取得の年賦に大久保市政は非常に苦慮してきました。

そのような中で、平成7、8年度は市の財政構造の弾力性を示す経常収支比率が、全国660余市の中でワースト1位になるほど最悪でした。そのため、平成9年度は定年等で退職する職員の退職金の財源も完全に枯渇し、全国にも例のない借金(退職手当債)で支給するという事態にまでなりました。

さらに、同年度は蛇の目跡地取得の年賦も返済不能に陥り、平成10年度も同様に元金を据え置き、利息の1億円だけを支払うという状況でした。

平成11年4月、私が市長に就任した時、蛇の目跡地の残債は約50億円でした。そこで、返済期間を平成23年度までに5年間延伸し、年賦金の4億6千万円を3億5千万円に減額してもらい、返済を再開しました。

当時、庁舎建設に認められる起債(借金)の充当率は50%であり、建設費の半分の基金(貯金)の確保が必要でしたが、小金井市の庁舎建設基金は僅か44万8千円でした。また、自治体が計画的な財政運営をするため、財源に余裕がある年に特に目的を定めず積み立て、必要な時に取り崩せる財政調整基金は70万7千円でした。

この様な財政状況から庁舎建設は到底手の届くものでないのは、市政を知る誰もが分かっていたことです。

「リース庁舎を使い続け」と批判されますが、リース契約では期限の平成15年末の3年前に、その後、市が使うか否かを信託銀行側に伝える必要があり、平成12年度、議会に対し、市財政の現況から他に選択の余地はなく、契約期間を5年に短縮して更新することを説明しました。当時、市議会議員だった西岡氏にもご理解をいただいたものでした。

西岡氏は平成9年から平成17年まで市議として、大久保慎七市長の政策を支える与党の立場にあり、その後も責任ある市政の一端を担い政策を推進する立場にあっただけに、冒頭の法定ビラの主張は理解に苦しみます。

また、リース庁舎(第二庁舎)取得については種々の厳しい条件が整ったことからの提案であり、小金井市にとって、議会の判断によりリース庁舎を継続せざるを得ないのが非常に悔やまれます。

(つづく)

新しい年を迎えて

新年明けましておめでとうございます。

希望に満ちた新春をご家族おそろいで、健やかにお迎えのこととお慶び申し上げます。

昨年は多くの自然災害により大きな被害が発生しました。災害のない平穏な1年であることを願うとともに、自分たちのまちは自分たちで守るという心構えも必要と考えます。

また、国際情勢の劇的な変化もありました。想定外の英国のEU離脱、米国大統領選にトランプ氏の当選等驚かされた1年でもありました。

世界各地で激しい紛争やテロが今なお続いています。シリアなど紛争地域からの報道は悲惨であり、被害者は常に子どもたちであり女性です。私たちは、シリア内戦等から目をそらさず自分のこととして捕らえ、世界平和のために何ができるか考えていきたいものです。

私は、4期16年の市長としての任期を終え、昨年2月から、市議14年、市長16年の30年間の体験を、本紙に『走り続けた16年』と題し寄稿しています。

これは、苦難の時代が長く続いていた小金井市の歩みを、市民の皆さんに忘れないでいてほしいのです。これからも、財政問題、街づくり、庁舎問題、ごみ問題等、今だから言えること、そして、市政の現状等をお伝えしていきたいと考えています。

本年は3月には小金井市議会議員選挙、6月か7月には都議会議員選挙が行われます。

また、いつ解散・総選挙になるか分からない衆院選も予想され、選挙の年となります。ここで最も重要なことは選挙公約です。選挙公約が直接投票行動につながるからです。

小金井市長選挙が行われて1年が経過しました。選挙の争点は庁舎問題でした。

西岡真一郎市長の選挙公約は市庁舎、図書館等6施設の複合化であり、新たな財政負担もない等のメリットを訴えて当選しました。

昨年1月、就任し最初の議会では「6施設複合化は直近の民意であり、市長選挙に掲げた政策をご信任いただいた以上、それを果たすことが何より重要なことで、私に与えられた使命であり、何としても果たしたい」との発言でした。

しかし、5月にはその公約や発言を撤回し、図書館等を除いた「4施設の早期実現を優先することを、私のゆるぎない方針とする」と議会で明言しました。さらに、その4か月後の10月には「ゼロベースで見直すことを決断し、今後、市民・議会・行政が一体となって、進むべき方向を定めます」に変わりました。

その都度、発言の「言葉」は美しく耳に響くのですが、これが責任ある市政と言えるのか疑問を持たざるを得ません。

この様な状況を市議会がどの様に判断していくのか。また、市長の公約である「対話重視」は、どう具現化されたのかも問われます。

(つづく)

【今、市政で何が】

昨年末、12月20日の市議会本会議の市長報告で、西岡市長は新庁舎と新福祉会館は平成33年度完成との考えを示しました。しかし、福祉会館の建設場所は未定であり、移転を前提とする清掃関連施設の移転先についても、具体的には本年2月の第1回定例会に示すというものです。

2月の第2庁舎の賃貸契約更新に向けての協議や3月26日の市議選に惑わされず、慎重な対応を願います。