走り続けた16年(209)

新しい年のスタートにあたって

希望に満ちた新しい年のスタートです。東京は好天に恵まれ、連日、市内各所から霊峰富士を仰ぎ見ることができました。特に、野川第一調節池北にある「はけの森97階段」の上からの富士山は、遮るものもなくその勇姿が一望できます。それは、日没後のシルエットも同様です。

関東地方は小金井市と同様のお天気続きでしたが、北海道や東北、西日本の豪雪を考えると手放しで喜んではいられません。

一方、年末・年始の人の移動によるのか、落ち着いていた新型コロナウイルスの感染が拡大され、第6波でないことを願います。また、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の市中感染も広がってます。基本的な感染防止対策の徹底と早急な3回目のワクチン接種が望まれます。

さて、昨年12月市議会で、西岡市長が積極的に進めてきた、新庁舎や福祉会館の建設に必要な建設確認申請は行わず、令和4年3月定例会に建設費も提案しないことを表明しました。市長は、抜本的な見直しは手戻りになるから避けるべき、と言いつつ、議会の理解で進める事業であることから、と微妙な言い回しをしています。これまで、見直しの機会は、市民への意見聴取(パブリックコメント)の時や、都が水害予測地図(ハザードマップ)で庁舎建設予定地は1メートルの浸水の危険性を指摘した時点で。また、新型コロナウイルスの感染が拡大した時点で、議会の意思を尊重して、一旦立ち止まって考えていれば、手戻りの損失は最小限で済んだのではないでしょうか。

総事業費が123億円まで膨らんだ以上、設計変更以外の手法でコストダウンが図れるなら市長も与党系議員も早急に解決策を示す必要があります。

設計はシンプルであるべきです。6階建庁舎に、北側の3階の福祉会館を複雑に組み込ませたL字型や、庁舎にはより安全な地震対応では市民の理解は得られ難いです。西岡市長は就任するやいなやこれまで進めていた福祉会館の建設を白紙に戻しました。継続していれば平成31年には完成していたのです。

また、既成事実を積み上げるためか、平成30年度で市はリサイクルセンター事業から撤退しました。このリサイクルセンターは今でも空き家のままで、閉鎖が早すぎました。

本紙、令和元年6月11日号の特別投稿「新庁舎建設に当たって」で、私は多くの提案をしました。庁舎建設予定地は、保育園児の散歩コースで、遊び場でもあります。この庁舎屋上に天然芝を植えて市民に解放すれば安全で、下を走る中央線の電車を見て喜ぶ園児の顔が目に浮かびます。

小金井市の魅力発信・シティプロモーション、その代表はスタジオジブリと貫井北町にある情報通信研究機構(NICT)です。日本の標準時といえば明石市と言われますが、それは、子午線(東経135度)が通っているだけのもので、日本の標準時を作っているのは小金井市のNICTなのです。この標準時を発信する時計を庁舎の避面に設けるか、時計塔で中央線で通勤・通学等する人々にアピールしてはいかがでしょうか。小金井市のイメージアップにつながるのは確実です。

また、スタジオジブリには時計塔等のアイデアなどをお願いしてはいかがでしょうか。

(つづく)

走り続けた16年(38)

苦闘する庁舎問題⑨

私は、佐藤和雄市長の下で平成23年6月に設置された「新庁舎基本計画市民検討委員会」の答申を尊重し、「市庁舎建設基本計画」を作成しました。

この計画の不安材料は財源問題です。後年度負担になる34億円の借入金や10億円の一般財源投入などが、蛇の目工場跡地取得の時の借入金の返済が市財政を圧迫したのが私のトラウマになっていました。他市のように潤沢な基金(貯金)の裏付けがあってのことでなく危機的な財政状況の中での不安定なやり繰りでの計画なのです。

リース庁舎からの脱却を願う議会は、庁舎建設には常に積極的でした。そのため、予算を執行する責任ある立場の私は、それに流されないよう慎重な判断にならざるを得ませんでした。

新庁舎建設基本設計委託費3千291万円を含む平成26年度の一般会計予算は、賛成多数により議会の議決を得て、平成26年度がスタートしました。

そこに、大きな問題が派生したのです。

それは、平成23年3月11日に発生した数百年に1度ともいわれる大災害、東日本大震災の復旧、復興事業と平成32年の東京2020オリンピック・パラリンピックに向けての建設ラッシュが重なり、建築資材の異常な高騰、技能労務職者の不足による人件費の高騰が重なりました。

そのため、55億円で計画していた新庁舎の建築費は3割アップの70億円を超えることが想定されました。これは、前年の予算編成時から予想されていたものですがそれが現実になってきました。

そこで私はその動向を見定めるため、予算の執行を見合わせることにしました。議会では厳しい議論になりましたが、私は、再び蛇の目工場跡地の購入の轍を踏まないことを決意していました。

議会では、新庁舎建設の着手が遅れればリース庁舎の延伸につながり、地主と信託銀行を儲けさせるだけだとの議論もありました。

しかし、内情は全く別で、市と信託銀行の間では賃貸契約の契約期間が切れた後でも、契約期間と賃借料で厳しい交渉が続いていたのです。結局、この賃貸借契約に関しての交渉は、三菱UFJ信託銀行の担当トップと私との直接交渉になりました。

私が直接交渉に乗り出したのは、膠着状況にある交渉を打開することと、地権者と信託銀行が今後も信託契約を継続していく意思があるかどうかを探るためでした。

リース期間については市の主張が通り、新庁舎建設基本計画の庁舎完成時期を鑑みて平成30年8月末日までの4年8か月間で合意しました。しかし、金額は折り合えず、結局、議会の議決を得て、裁判所に調停を申し立てました。裁判所の裁定は双方が歩み寄る形の決着になりました。

その交渉の中で、第二庁舎の所有者も信託銀行も信託契約には双方にメリットがなく、信託契約の解除も考えていることが推測されました。それにより新たな展開が想定されることになりました。

(つづく)