走り続けた16年(153)

新型コロナウイルス②

世界遺産に登録された小笠原のボニンブルーの海が見たく旅行社の勧めで、一昨年7月「にっぽん丸」の日本返還50周年記念の小笠原諸島クルーズに参加しました。

55年前の学生時代、単身で世界一周の無銭旅行を試みた時、大阪商船は貨客船「さんとす丸」の船底に乗せてくれて、16日間かけて横浜からロサンゼルス玄関口のサンペドロ港まで太平洋を渡り、アメリカの土を踏ませてもらった大恩があり、系列の商船三井のクルーズに決めました。1週間位なら退屈も我慢できるとの思いで出発したのですが、妻は演奏会、私は映画鑑賞などと退屈することは全くなく、高齢者には荷物の整理も移動もなく快適な船旅でした。

次は、と考えたのがダイヤモンドプリンセスでした。1月20日横浜を出港し香港・ベトナム・台湾コースと4月29日の大阪、鳥羽を経由し、ロシア、ウラジオストク、サハリン(樺太)のコルサコフ(大泊)のコースを提示されました。迷った末、ロシアは初めてでもあるし、知人が昔ウラジオストクに住んでいたと知ったのと、私が生れ、父と生き別れた中国黒竜江省とは国境を挟む位置にあり、7月に旧満州を訪ねる予定もありロシアのコースを予約しました。

1月20日、東南アジアに向けて出港したダイヤモンドプリンセスは香港で下船した乗客の一人が、2月1日新型コロナウイルス陽性であることが確認されました。そのため、政府は横浜港に帰港したこの船の乗客乗員約4千人の下船は許可しませんでした。その後、乗客乗員の健康診断が実施され、多くの感染者が確認されたことから14日間の船内での隔離となりました。その間も感染が次第に拡大されるのが連日の報道を通して知らされました。もし、私がこのコースを選択していたらコロナ禍の渦中に引き込まれてしまったと思うと非常に複雑な思いです。ダイヤモンドプリンセスでは、712人が感染し、13人が亡くなったと報道されてます。

自分には非がなくても、陽性、陰性に関わらず、多くの方を煩わせ迷惑を掛けることから、小金井に戻るには日時がかかったのではないかと思われます。

また、本人は勿論、家族への感染の可能性の中で、懸命に治療に当たっている医療従事者や社会生活維持に不可欠な仕事に従事している方々には感謝こそすれ、心ない差別は絶対にあってはならないことです。また、感染してしまった人々に対する誹謗中傷もあってはなりません。

このコロナ禍の怖いのは、本人は無症状で知らないうちに他人に感染させてしまうことです。自分だけでは済まず、多くの方々に迷惑をかけてしまうということです。そのため、私たち一人ひとりが「新たな日常」の生活を日常にしていかなければなりません。

感染防止か経済社会活動の復活か苦悩しています。経済の急激な縮小を復旧させるには時間がかかり、どれだけの年月を要するか分かりません。現在、事業者等は規制解除を求めています。それが、再び緊急事態の発令となれば取り返しのつかない事態となります。厳しい判断が求められるところですが、その間の経済的負担は、国や自治体が保証すべきものと考えます。

(つづく)