4日夜、テレビニュースが、りそな銀行会長の細谷英二氏(67歳)の逝去を報じました。私は、その報に接したとき思わず「エー」と大声を発してしまいました。細谷氏は、小金井市が大変お世話になった方だからです。
細谷氏の経歴については新聞等の報道で詳しく報じられていますが、旧国鉄の分割・民営化に辣腕を振るい成功に導きました。その後、東日本旅客鉄道株式会社(以下「JR東日本」)の副社長として活躍されました。乞われて、巨額の公的資金が投入されたりそな銀行の会長に就任し、数々の改革を行うと同時に、大きな成果を上げてきた方です。
武蔵小金井駅南口の再開発は、何度も事業執行が不可能になるような難関に直面してきました。それらを、ひとつひとつ乗り越えての完成でした。
その難関のひとつがJR東日本の転出計画でした。平成14年2月、都市再生機構は小金井市に対し、再開発事業の断念を通告してきました。それは、武蔵小金井駅南口に権利を有するJR東日本が都市再生機構に再開発からの転出を表明、都市再生機構の説明も及ばず、JR東日本は転出を決定しました。この再開発はJR東日本が転出すれば事業は成り立たないことから、都市再生機構が小金井に事業断念を伝えてきたものです。
私は諦めませんでした。平成14年2月18日(月)確定申告初日、武蔵野税務署で武蔵野、三鷹、小金井の3市長の確定申告のセレモニーがありました。その足で、武蔵野市役所市長室に行き、JR東日本に人脈を持つ土屋正忠市長(当時)の紹介で、JR東日本副社長の細谷英二氏と、その場で電話で状況を説明しました。その後、何回か電話で小金井市の再開発の必要性等を細谷氏に訴え、理解を求めてきました。
同年2月25日、自治会館での東京都市長会の後、自治会館の駐車場から武蔵野市長車の携帯電話を借りて細谷氏と話しました。車の隣りの席では、その会話を土屋市長がメモを取っていました。細谷氏の話は「新たな投資となる保留床の購入は無理だが、権利床は確保する。小金井市の再開発には協力する」というものでした。JR東日本の計画変更の再変更です。これにより、JR東日本の撤退は回避され事業は再開されました。小金井の再開発にとって記念すべき一瞬でした。
この再開発は、都市機能を充実させるためJR東日本には新たな投資を期待していました。しかし、それが無くともJR東日本が自らの権利床に責任を持ってくれれば事業が成り立つよう計画してきたものです。
JR東日本の了解が得られたので、事業を継続することを都市再生機構に伝えました。都市再生機構は驚きました。変更を決定した計画を元に戻すことにどんな力が働いたのか、信じられない、ということでした。事業継続決定は、細谷氏と私との電話での話し合いがすべてでした。紹介をいただいた土屋正忠氏にも感謝いたします。
実際に細谷氏にお会いすることはなく、お願いも、経過も、感謝のお礼もすべて電話でした。こんなことになるなら、一度お会いしてきちんとお礼を申し上げるべきだったと悔いています。武蔵小金井南口再開発事業で大変お世話になったおひとりです。
細谷英二氏のご冥福を心からお祈り申し上げます。