走り続けた16年(39)

苦闘する庁舎問題⑩

平成26年度に入り、新庁舎建設事業については、新庁舎建設基本計画で示したスケジュールに沿った円滑な事業の進捗が図れるよう検討を重ねましたが、社会的影響による異常な建設費の高騰から、建設事業費55億円での計画が30%アップの70億円を超えることが試算されました。

全国各地で公共施設建設の入札は軒並み不調となり、各自治体は予算を増額して対応するか、計画の変更や中止の判断に迫られていました。

小金井市は元々財源確保が困難であり、無理すれば市民サービスにも影響を与えることから、財源が確保できるまでの間、事業を凍結することにしました。平成4年120億円の蛇の目工場跡地取得の経過が私のトラウマになっていたのです。

議会の一部からは、リース庁舎の契約延伸につながるとの厳しい意見も一部には出ましたが、基本設計委託費の執行は見合わせることにしました。

一方、第二庁舎の賃貸借契約更新の交渉を三菱UFJ信託銀行と続ける中で、信託契約の解除に向けての協議も進めているとの情報が、所有者、信託銀行の双方から得ました。30年の信託契約が20年での解除になるのですが、市は当事者でないことから、立ち入る立場にはなく、両者の協議を黙って見守っているだけでした。

7月下旬、三菱UFJ信託銀行から8月18日付けで信託契約を解除する旨の通知を受け、市は、その場合の第二庁舎や駐車場に係る地位継承に関する合意書の締結などの諸手続きの準備に入りました。これまでは、所有者との直接交渉はできず信託銀行との交渉でしたが、これからは、直接交渉ができることになりました。

交渉には、第二庁舎の賃貸契約を担当し、所有者が成年後見制度を利用するなど煩雑な法的課題があることから、市側は総務部長を同席させました。

市としては、信託契約が解除されれば取得することも可能であり、平成23年度に起債の要件が大幅に緩和されたこともあり、取得に当たり起債の活用ができることを確認していたのです。

信託契約の動向も全く分からない4月の時点で、職員が私の「あらゆる方策を…」の発言から、具体的指示もない中、自主的にリース庁舎の取得に、市町村振興宝くじの収益等を活用した、都市町村振興協会の超低利による起債が可能か東京都と協議し、計画が実現しない場合は取り下げることを条件に起債計画書を提出していたのには驚かされましたが、職員がここまで考え行動していてくれたことには感謝でした。

市民も議会もリース庁舎の早期解消を求めていました。リース庁舎を解消するには新庁舎を建設するか、第二庁舎を取得するかの方策しかなく、第二庁舎取得はリース庁舎の解消となり、それによって新たに生み出される財政効果等を活用し、新庁舎建設の財源確保を図ることとが、現実性のある選択肢と考え、それを目指すことにしました。

私と所有者との協議の中で、所有者には売却の意思があり、条件さえ折り合えれば売却してもいいという意向を確認しました。

(つづく)