走り続けた16年(63)

衆院選 ⑤

私は、政権交代が可能な二大政党制が理想だと考えます。

それは、保守対革新でなく、現実路線を継続できる保守対保守が理想であると思います。そのためには、単なる抵抗勢力でない健全な野党が期待されます。しかし、それが実現せず自由民主党の一党支配が一時期を除いて長期間に渡って続いてきました。それが、たまたま平成21年の衆院選で自民党首脳の不適切な言動などにより、国民が自民党政治に嫌気がさし、民主党に一度やらせてみたらという風潮で民主党政権が誕生しました。

しかし、その3年3か月間に鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦氏と三人も首脳が変わり、その間に、東日本大震災が発生、その危機対応を誤り、現場を混乱させ、その後の課題解決も充分に果たせず大混乱に陥りました。

株価も下落を続けるなど経済も低迷し、失業率も上昇し就職困難期となるなど国民失望の中、再び自民党が政権に復帰しました。

危機に対し適正な判断のできない政党に政権を任せられず、当時の民主党の子ども手当てなど人気取りの政権公約、マニフェスト等を見ても政権を担っていくのは無理があったと考えます。

今回の衆院選の公示直前に小池百合子都知事による希望の党が誕生しました。そして、離党問題で混乱し、先の見えない民進党は前原誠司代表の決断により希望の党との合流を決定しました。

しかし、小池代表は、民進党の全てではなく政策の異なる人々は「排除する」の一言により状況は一変しました。私は小池知事の政治手法に与みするものではないが、民進党と合流するには政策を同じくする者が集まって運営していくのは当然だと思います。「排除」の言葉は本人の人柄が出てしまい墓穴を掘りました。

民進党が党の一部を残して希望の党、立憲民主党、無所属の会に分かれました。それらが、再び意見の対立を残したままで統合するような動きは信じられません。また、希望の党の代表選では基本政策の異なる二人の争いとなり、現実的対応を執る玉木雄一郎氏に決まりましたが、大串博志氏と同様の考え方の議員も一定数内在することになります。これでは、北朝鮮問題が切迫する国家の危機等に対し、ガバナンス(統治能力)の欠如を招き、民進党政権時と変わらず、結局、政権を担うという存在にはなりません。

立憲民主党も反自民、反安倍政権の抵抗勢力に過ぎません。自民党に対抗できる健全野党の登場に期待します。それが、結果的に自民党政治の質の向上につながるとともに、ひいては日本の政治のレベルアップになるものと考えるからです。

政権交代を可能にすると期待した小選挙区制度でしたが、課題も多く、当然ですが死票が多く出るし、得票数と当選者数のアンバランスの発生。当選には政党の支援が必要になり、議員は政党に従うことになります。また、その時の風に乗っての当選も多くみられます。

その結果、中選挙区時代の群雄割拠の風潮や切磋琢磨の気風を失い、特徴ある独自の政策を掲げる議員の誕生も難しくなり、世襲候補に有利な制度になってしまいました。

(この項終わり)