走り続けた16年(35)

苦闘する庁舎問題⑥

平成3年12月のバブル経済時に120億円の最高値で小金井市土地開発公社が先行取得した蛇の目工場跡地を、バブル崩壊後、激減する税収の中でその借入金80億円を返済していくという大変厳しい最悪のパターンになってしまいました。

これは、議会も与野党を問わず大久保慎七市長に購入を求めた結果でもあります。誰もがバブル経済の崩壊を見通せず、地価の下落なども考えられず、熱に浮かされたように蛇の目工場跡地の購入に走ったのです。

庁舎建設基金等40億円を頭金とし、新庁舎建設に着手できないことから、緊急避難として、議会の同意を得て10年の契約で第二庁舎を賃借しました。しかし、新庁舎が建設できなければ、リース庁舎が続くことになり、平成15年には新たに平成20年まで、そして、25年、さらに、30年へとリース庁舎が続くことになります。

平成11年、私が市長就任以降、小金井市の行財政改革が進み、財政の健全化が見えてきた平成20年9月、再び、リーマンショックに見舞われました。それは、世界経済に大きな打撃を与えましたが、小金井市など基礎自治体も税収減等大きな影響を被りました。

私は、従来から庁舎建設は市の政策の優先順位は決して高くないと考えており、市民施設が優先されるべきと考えていました。

庁舎と福祉会館を比べたら福祉会館が優先するというのが考えでした。ただ、小金井市の場合は賃借庁舎であるという特殊事情が、庁舎建設へと向かわせました。

蛇の目工場跡地が、完全に小金井市の所有になったのは平成23年度で、借金の返済に約20年を要しました。また、同年総務省は庁舎建設のための起債(借金)の限度率を、建設事業費の50%から75%に緩和したのです。

10億円の自己財源があれば40億円の庁舎を建てることができるのです。就任時40万円の庁舎建設基金は約4億円となり、これを早急に10億円にするのが当面の目標でした。

また、財政調整基金は就任時の70万円が約16億円になりました。

庁舎建設が見えてきたことから、庁内に新庁舎建設基本計画市民検討委員会を立ち上げ検討に入りました。

庁舎の建設場所について、議会は蛇の目跡地と再開発第2地区に二分され、また第二庁舎の取得を主張する議員もいました。庁舎の位置の変更は議会の特別多数議決であり3分の2以上の同意が必要になります。

そこで、新庁舎建設市民検討委員会の答申を私も尊重するので、議員もいろいろ考えがあるでしょうが、建設場所にあたっては、市民検討委員会の答申を尊重してもらいたいとお願いしました。

答申は、場所を蛇の目工場跡地とし、全体規模を1万3千平方㍍を上限に、建設費は55億円で33億円が借入金で一般財源での捻出が10億円です。建設スケジュールは5年で竣工の計画でした。

私の不安は財源問題です。再び、後年度負担の大きな借金や一般財源の10億円など、蛇の目工場跡地取得の経過がトラウマになっていました。

そこに、再び大きな問題が派生しました。

(つづく)

走り続けた16年(10)

財政健全化への闘い②

平成11年4月、私の市長就任時は、特に目的を定めず自由に使える財政調整基金は70万円でした。そして、課題の庁舎建設基金が44万円、職員退職手当基金が36万円であり、人口10万6千人(当時)の自治体が一般家庭の預貯金と比較できるような状況でした。

先の市長選挙の際、「平成4年に購入した土地に庁舎を建てず長期間放置し、目的外に利用してる」との批判がありました。それを信じた人もおられたことでしょう。

しかし、用地取得の借入金の返済は平成23年度にやっと完済したものであり、経営収支比率90%台の財政状況の中で、市民サービスの維持向上と借金の返済に追われており、庁舎建設の基金の積立ができるような状況になかったというのが実態だったのです。

それは、平成4年に市の要請を受けた小金井市土地開発公社が、起債(借金)で蛇の目ミシン工場跡地を庁舎建設予定地として98億6千万円で先行取得をしました。その起債の償還は市が分割で返済していたのですが、取得5年後の平成9年度にはバブル経済の崩壊もあり、毎年の返済額である4億6千万円の返済ができず、元金の残額である50億円は据え置かれたままで、年間約1億円の利息だけを納めるような状況でした。

私は、苦しい財政状況ではあるが、返済期間を平成18年度から平成23年度まで5年間延伸し、毎年、元金3億5千万円と利息を返済することにしたのです。

庁舎問題に関しては、ビジョンが示せず迷走し、その場しのぎだったとの批判もありましたが、市政をよく理解していただければ、その様な批判にはならないと思ってます。

私が市長に就任して最初の議会は平成11年5月11日の臨時会でした。これは、大久保慎七市長が、残り任期わずかとなった平成11年3月末に行った専決処分(本来、議会の議決を経なければならない事案を、地方公共団体の長が法の規定に基づき議会の議決の前に自ら処理すること)の承認を得ることでした。

その内容は、平成10年度の一般会計決算を、都の指導により形式的に赤字にしないようにするため、都からの急遽(きょ)の借入等の支援や公園整備基金からの借入、また、国民健康保険特別会計や下水道特別会計への繰出しを行わないことなどの予算措置を講じて、赤字を回避したのです。しかし、繰入のなくなった国保等特別会計は赤字となるため翌年度に予定される歳入を繰上げて充用するという措置を講じることになりました。

これらはすべて後年度負担となり議会からは厳しい指摘を受けましたが、私は、大久保市長のとった手法は財政状況を踏まえると止むを得ない判断だと答弁しました。本会議の採決の結果、議会の承認は得られました。

昨今、一部市民や議員から「崖っぷちの財政」と揶揄(やゆ)されることもありましたが、私は、昭和50年前後に崖下に転落し、その後、長い間暗い谷底をさ迷っていた小金井市の財政が、谷底からやっと陽の当たる崖っぷちまで這(は)い上がってきたのだと思っています。

財政の健全化などを見るときは、その時々の判断も必要ですが、継続的な視点で5年、10年、そして、20年前からの動向を見ながら判断する必要があると思います。

(つづく)