走り続けた16年(45)

苦闘する庁舎問題⑯

平成26年9月1日開会した第三回定例会は賃借している第二庁舎を取得することを所有者と合意したことから、補正予算提案の準備に入りました。

議会の理解を得られ易くするため、議会の求めに応じて非公式の全員協議会(全協)を特別委員会等の合間を縫って、17日、19日、22日、25日、26日と行いました。取得に理解を得るため当局から多くの資料を提出し、さらに、議員からの160点を超える資料要求に徹夜し、明け方までかけて対応してきましたが、取得に財政効果はないとの反対の論調は変わらず体力戦の様相となりました。

当局側の答弁に足並みの乱れも出て、議員の中から補正予算撤回の声も出てきました。その様な中で、25日、休会の予定を変更して本会議が開かれました。ここで、初めて補正予算が上程され、私が提案理由を説明し、各部長が補足の説明をしました。

提案理由は、第二庁舎を18億6千万円で取得するものであり、それは、悲願のリース庁舎解消であり、その上、財政的にも効果が出るということです。その後、さらに70点を超える議員からの資料要求となりました。

翌26日(金)は再び全協に戻りましたが、結果的に土地、建物は市の資産として残るにもかかわらず、買い取ることで想定のデメリットばかりの発言が延々と続きました。しかし、夜中の11時過ぎの全協終了後、担当する職員から「徹夜してでも続けたかった」との声を聞いて、心強かったし嬉しかった。

9月29日(月)午前11時過ぎに始まった全協で、篠原ひろし議長から「本日までの議事の進行状況ならびに審議の状況に鑑み、議長から、市長においては議案第61号、平成26年度一般会計補正予算(第4回)の取下げを進言します」との発言があり、わずか1分でこの日の全協は終わりました。

議長は議員各自の意向を確認し、議会の同意が得られないと判断しての発言だったのでしょう。

市長は、直接市民に選ばれる米国大統領が引き合いに出されるくらい組織内では大きな権限を持ちますが、それは議会には及ばず、議長の権限で運営されるものであり、議員多数の意向には従わざるを得ません。

翌30日の全協で、冒頭、篠原議長から「昨日、議長として市長に進言しました。その協議の結果について、如何なりましたか。市長から答弁を求めます」との発言があり、私は「議案61号につきましては、議長の進言を重く受け止め、改めて内容を精査する必要があり、撤回させていただきます」と断腸の思いで発言するしかありませんでした。

この発言に対し、議長の撤回の進言を評価する2人の議員と、財政的にもメリットがあり撤回は残念なことだ、との発言もありました。

撤回は、ここまで頑張ってくれた職員や、理解してくれた自民党、公明党、五十嵐京子議員等与党議員には申し訳なかったが、この様な状況から第二庁舎の取得は断念せざるを得ませんでした。

(つづく)

走り続けた16年(44)

苦闘する庁舎問題⑮

平成26年第3回(9月)市議会定例会開会の1日に合わせて、リース庁舎の解消と財政効果のための、第二庁舎取得の補正予算を提案できればよかったのですが、日程的に無理があり、後日送付(議会開会後に議案を送付する)となったことも取得に反対する議員の大きな理由になりました。しかし、取得を次の第4回(12月)に先送りすれば、その分、取得が遅れることになり2か月分の家賃、3千6百万円の負担が生じることと、低利での借入が不可能となり、合わせて約1億円の財政効果を失うことになるため、あえて提案しました。

もし、私が混乱を恐れるあまり提案を先延ばしすれば、市の利益を逸することになり、その不作為が問われることになります。

経過については、3月定例会の施政方針で私は「庁舎問題はあらゆる方策を検討する」と述べ、職員にも考えるよう伝えました。

それを受けて担当職員は、平成23年度に庁舎建設の起債(借金)の条件が大幅に緩和されたことから、中古の建物を庁舎として取得することの可能性について東京都と協議し、問題がないことを確認しました。そして5月、取り下げもあることを条件に起債の申請をしていました。これは、職員の自発的発想からの行動で、私は評価しています。

その後、前年末で切れている第二庁舎の賃貸借契約更新の交渉の中で、所有者と三菱UFJ信託銀行の間での信託契約は、相互に利がなく信託契約解除の動きがあることを知らされました。

7月末、8月18日で信託契約を解除するとの報告を受け、市は地位継承の手続きや、取得の方向とした場合、適正な価格を確認するための不動産鑑定に入りました。

そして、正式に信託契約が解除されたことから、市は所有者と直接交渉ができることになり、所有者は条件が合えば売却も考えるという改めての確認で、職員は与えられた職務を果たすべく、各々が建物や躯体について、敷地の境界の確定、法的問題、財政問題等、取得の方向の中で課題の整備に入りました。

そして、9月1日に第二庁舎等の土地・建物を約18億6千万円とする不動産鑑定書が納品され、3日の小金井市不動産価格審査会の審査の結果を受け、庁議で取得を決定し、所有者に金額を提示し検討を依頼しました。

9月9日、第二庁舎の土地と建物の売買金額を18億6千万円とすることで所有者と合意し、法的な効力は無いが、売買金額等についてお互いの意思を確認するための協定書を締結し、取得に向けて市議会へ提案するための、財政取得の議案の作成に入りました。

低利での起債の申請期限の9月12日を、都の配慮で定例会の前半の最終本会議の24日までに延長し、さらに26日、30日と延長してもらい、議決を目指し市議会全員協議会の厳しい質疑に対応しましたが、残念ながら当初の目算が外れ、議会多数の理解を得ることができませんでした。

(つづく)

走り続けた16年(43)

苦闘する庁舎問題⑭

平成26年第3回(9月)定例会後半に予定されていた決算特別委員会を棚上げし、第二庁舎取得のための全員協議会の質疑が続きました。

全庁あげてリース庁舎の解消のため、第二庁舎取得に取り組んでる最中に、上原秀則副市長から「(所有者との交渉は市長と総務部長であり)日時、概要等について、私を含め、部課長も存じ上げておりません」との信じられない答弁が飛び出しました。

さらに、私自身が直接交渉してるにも拘わらず、成年後見人制度など煩雑な法的要件が絡むことから総務部長を同席させたことを、あたかも、総務部長が交渉していたかのようにすり替え「小金井市組織規則や小金井市処務規定を無視しての交渉で、組織の体をなしていない、大事なことなので答弁は急がないが」との上原副市長への質問に対し「一定お時間を頂きたいと思います」と、答弁を保留したのは残念でした。

市の事務方のトップにある副市長には「私たちは、法令や条例を順守し、規則、規定に反しない行政執行をしている」と言い切って欲しかったのです。組織規則や処務規定は市長の権限を制限するものではないのです。

篠原ひろし議長から、これらの答弁を受けて「答弁が無茶苦茶だ、第二庁舎取得の提案を取り下げてはどうか」と改めて言われましたが、私は「私の答弁が市の考えです」と伝え、この時点ではこれに応じませんでした。また、上原副市長の保留した答弁は、保留のままで終えてしまいました。

市政の執行においては大きな権限と責任を有する市長も、議会に関しては招集する行為までで、招集後の議会運営は議長の権限の範疇(はんちゅう)になり、議長の差配によることになります。

第二庁舎取得の補正予算は予算特別委員会へ付託されることもなく、法的位置付けのない、議会全体の共通認識とするための、いわば勉強会の全員協議会に留め置かれ、その中で激しい議論が続けられました。

取得に反対する市民からは、議員や市長に要望書等も提出され、昼休みには、市民グループ十数人の人たちが本庁舎前でハンドマイク等を使って「第二庁舎取得、絶対反対」のシュプレヒコール等も聞こえてきました。

私は、議決機関である市議会が議決しないことを理由に、市長の権限で議会の議決を得ないで予算を執行する専決処分も考えました。しかし、第二庁舎取得は、法的要件として予算措置の議決のみならず、財産取得の議決を必要としています。もし、強引に専決処分をすれば議会多数とのがちんこ対決となり、財産取得の議案が可決されることは不可能となります。

市民の悲願であるリース庁舎が解消になり、財政効果にもつながる第二庁舎の取得は、議会多数の議員に私の考えを節目節目で伝え、理解されての提案だったのですが、議会の議論の流れによるのか、市民運動に動かされたのか、私の想定通りの展開にはならずリース庁舎継続をすることになりました。

(つづく)