走り続けた16年(122)

給食の委託化と都議選の顛末④

小金井市の財政危機を乗り切るためには、職員の仕事に対するモチベーションを高めながら、職員数の削減と給与制度を是正する必要がありました。

平成11年4月、私が市政を引継いだ時の職員数は915人であり、人件費は約99億円で一般会計に占める人件費の割合は32・3%でした。それが、一期目の任期の終わる平成14年度の職員数は819人で人件費は88億円となり、その比率は、29・7%と30年振りに30%を切ることができました。三期目の平成22年度は職員数は729人、75億7千万円となり、その比率は19・9%と小金井市の財政統計上、悲願の10%台を初めて記録しました。その後も着々と行財政改革は進み、長年続いた人件費の呪縛からは解放されつつありました。しかし、財政は相変らず厳しい状況が続きました。

そのような中、タブー視された学校給食の民間委託化に取組みました。それは、年間180食程度を提供する給食調理に要する人件費が高すぎるということで、私も議員時代から指摘していたものです。

市立中学校5校の給食調理業務の民間委託については多くの難関を突破し、平成18年9月に市立一中、二中の委託を実施しました。私は、民間企業によって作られる給食に不安を持つものではないのですが、厳しい議論の末の委託決定だけに、その状況には常に気を使い議会等の指摘がどう生かされているか、給食を食べに行くことで確認していました。それは、委託の中学校だけでなく直営の小学校にも、関係する職員と一緒に訪ねました。

学校給食は、子どもたちが食べる前に校長が学校給食衛生管理基準に従って「検食」するのです。その時間を使って各校長から教育の現場についての話は貴重でした。その後、教室に入って子どもたちと一緒に給食を食べるのです。短い時間ですが非常に楽しいものでした。また、給食後は調理師や用務員とできるだけ会話を交わすよう心掛けました。

私は、市内の学校だけでなく特徴ある他市の給食にも足を運びました。例えば、近隣の富裕市のランチルームは、ぶち抜いた広い教室でレストランのようにテーブルにはテーブルクロスが掛けられていました。また、各市のランチルームの利用は集団登校の仲間や、兄弟姉妹で、誕生月の子どもたち、バイキング料理にと活用。また、近隣の高齢者をお招きし同席するなど様々なアイデアが駆使されてテーブルを囲んでいました。

平成24年4月、残り3校の中学校の委託を実施し中学校給食の委託は完了しました。

時を同じくして人事異動により、現在、自民党市議会議員の河野律子さんが市の法務担当課長から総務部長に就きました。

小学校給食の委託を進めるため、河野部長には現場の職員をはじめ組合員に市の財政状況を理解してもらうため、積極的に交流し労使交渉を進めるよう指示しました。そのため、河野部長は機会があれば給食を食べ、調理師等と市政について意見交換していました。

私は、平成24年度末、平成25年9月からの民間委託を想定して余剰となる非常勤職員の任期期間を夏休みに入る前の7月までとする雇用契約とし、9月の委託へ向けて退路を断ちました。

(つづく)

走り続けた16年(121)

給食の委託化と都議選の顛末③

小金井市の危機的な財政状況を打開するため平成9年、計画期間を6年間とする第一次行財政改革大綱を大久保市政の下で作成し、11年度からは私が引き継ぎ、人件費の抑制など当初計画を上回る成果を上げました。

「量の改革」は一定進みましたが、平成14年からの第二次行革大綱では「量」に加え「質の改革」にも踏み出しました。

平成17年、総務省の助言もあり、二次行革(改訂版)を策定し、その中に学校給食調理業務の民間委託化が定められました。

私は市長就任以来、民間にできることは民間に任せるべき、との考えから技能労務職(現業職)の採用はしないという方針を貫いていました。そのため、退職等で欠員が生ずれば非常勤職員で対応しました。因みに非常勤職員の報酬は週30時間勤務で年約200万円、40時間で260万円の報酬であり、正規職員の給与は800万円でした。市財政の危機的状況を打開するためには当然とるべき道筋でした。

種々の困難を乗り越えて、中学校給食の民間委託は平成18年9月に市立一中と二中を実施し、残り3校の東中、緑中と南中は平成24年4月に実施しました。次は小学校給食です。

平成24年3月、行財政改革を先頭に立って進めていく総務部長が定年退職になります。後任を副市長等と協議する中で、現在、自民党市議会議員の河野律子さんの名前が出てきました。女性の総務部長は多摩26市にもなく市政最重要課題の行革を進める上で職員組合と直接交渉する厳しい役割であり、小金井市の団体交渉は日付を越えるのは当然で、4時位まで覚悟しなければなりません。43歳の若さでもあり大丈夫だろうかとの思いもありました。副市長の打診に「相談する人もいるので少し考える時間をください」とのことでしたが、「お受けします」との回答を得て発令となりました。

管理職への辞令は各人に課題を与えて交付しました。河野部長には「人件費削減のため、学校給食の民間委託等の人員削減と給与制度の改正に向け、職員の理解を得られるよう努め、強力に推進してほしい」と伝えました。

河野総務部長は、平成24年4月から27年3月まで3年間、地域手当12%を11%へ、さらに10%への引き下げ、住居手当の引き下げ、給料表の改正、部長職給料表の定額化、特別調整額(管理職手当)の定額化、通勤手当の支給上限額の制定、期末勤勉手当の職務加算割合改定、退職手当の引き下げ、高齢職員の昇給停止と抑制、給料表の都表移行時に措置した現給保障制度の段階的解消などの改善や、給食の委託も果たし、職員30数名の削減を行う等の結果、部長就任時70億円超だった人件費は3年後の26年度決算は60億円と約10億円の財政効果を果たすことができました。

河野部長はその後、企画財政部長として、日野市、国分寺市との3市による可燃ごみ処理工場の建設や運営等を共同で行う「浅川清流環境組合」を平成27年7月1日に設立させ、小金井市の喫緊の重要課題に市を代表する責任ある立場でこの大役を果たしました。

(つづく)